遠的矢とは?近的矢との違い・選び方・競技規則を解説

遠的矢は、60mの遠的で使いやすいように、シャフト、羽根、矢尻などを組み合わせた矢です。ただし、「遠的矢」という名前だけで、すべての製品が同じ重さ・太さ・仕様になるわけではありません。

全日本弓道連盟の競技規則が定めているのは、遠的競技で使用できる矢の要件です。自分に合う一本を選ぶには、規則に加えて、矢尺、弓力、現在の矢、出場する大会の要項を照らし合わせる必要があります。

遠的矢とは

遠的矢は、一般に遠的競技での飛翔を考えて構成された矢を指します。弓具店では「遠的用」として、ジュラルミン矢、カーボン矢、竹矢などが扱われています。

一方、競技規則には「遠的矢は必ずこのシャフト番号・総重量にする」という一律の規定はありません。弓力や矢尺、製品設計によって適する仕様が変わるためです。商品名だけで判断せず、一本の矢として安全に使用できるか、弓と合っているかを確認します。

競技規則で見る近的矢と遠的矢の違い

令和7年5月14日改定の「弓道競技規則」では、矢について、長さ、箆の太さと材質、羽根、筈、板付などの要件を定めています。近的と遠的で明確に異なる項目の一つが羽丈です。

確認項目 近的競技 遠的競技
羽丈 13〜15cm 9〜15cm
羽山 5mm以上
箆の太さ 直径6mm以上
箆の材質 竹または新素材(アルミ、グラスファイバー、カーボンなど)
羽根 鳥の羽根3枚を使用し、甲矢・乙矢の区別がある
長さ 各自の矢束に従った安全な長さ

遠的の羽丈は9〜15cmなので、規則の範囲は近的より広くなっています。ただし、規則を満たすことと、その矢が自分の弓・射に適していることは別です。大会要項に追加の指定があれば、そちらも守らなければなりません。

遠的用として販売される矢に見られる傾向

小さめの羽根を選べる

遠的用では、規則で認められた9〜15cmの範囲で、近的用より短い羽根を選べる製品があります。羽根を小さくすると空気抵抗を抑えやすい一方、矢の安定や扱いやすさとのバランスも必要です。「遠くへ飛ぶから短い羽根が常に上位」とは考えず、製品の設計と自分の射を合わせて判断します。

軽量なシャフトが選ばれることがある

弓具店の遠的矢には、軽さを特徴とするジュラルミンシャフトやカーボンシャフトが使われる製品があります。ただし、同じシャフトでも矢尺によって完成矢の重量は変わります。軽量化だけを目的にすると、弓との適合や矢飛びの安定を損なう可能性があるため、総重量とバランスを含めて選びます。

遠的用の矢尻が用意されている

弓具店によっては、遠的の的受けへ刺さりやすい形状を意図した遠的用矢尻を扱っています。矢尻だけを交換すればすべての矢が遠的向けになるわけではなく、シャフトとの適合、固定状態、競技規則、大会要項を確認する必要があります。

これらは市販品に見られる一般的な傾向であり、すべての遠的矢に共通する仕様ではありません。弓具店ごとに製品構成や推奨条件が異なるため、複数の数字を寄せ集めず、一つの完成矢として相談しましょう。

近的矢を遠的で使うことはできる?

近的用として使っている矢でも、遠的競技の規則と大会要項を満たし、弓との適合と安全が確認できれば、使用できる場合があります。近的の羽丈13〜15cmは、遠的の9〜15cmの範囲にも含まれます。

ただし、規則上使えることは、60mで十分な矢勢と安定した矢飛びが得られることを保証しません。届かない、矢所が大きく散る、風の影響を強く受けるといった問題がある場合は、狙いだけで補おうとせず、指導者と弓具店に相談します。

反対に、「遠的矢を買えば中る」とも限りません。遠的の狙いと練習の進め方は、弓道の遠的の狙い方と練習方法|初めて60mを引く前の基本で解説しています。

大会要項は競技規則と別に確認する

全日本弓道連盟の競技規則は共通の土台ですが、大会要項で弓具の追加条件が設けられることがあります。

たとえば、2026年10月23〜25日に行われる第77回全日本弓道遠的選手権大会の要項では、弓は竹弓とし、矢は新素材シャフトも使用できるとしています。弓具・服装は第3控で点検され、違反箇所が直されなければ失権です。

この条件を、ほかの遠的大会へそのまま当てはめることはできません。出場前には必ず、自分が参加する年度・大会名・版の要項を確認してください。

遠的矢を選ぶ7つの確認項目

1.安全な矢尺

最優先は、自分の矢束に対して安全な長さがあることです。短すぎる矢は重大な事故につながり得ます。現在の矢尺を自己申告だけで済ませず、必要に応じて指導者や弓具店で確認してもらいます。

2.弓力と引き方

同じ表示弓力でも、射手が実際に引く長さによって弓の働きは変わります。使用中の弓の種類・長さ・弓力と、現在の矢の仕様をセットで伝えます。

3.シャフトの材質とサイズ

アルミ、カーボン、竹には、それぞれ製品差があります。材質名だけで選ばず、シャフトの太さ、硬さ、重量、矢尺との組み合わせを確認します。競技規則では新素材も認められていますが、大会独自の制限がないかも必要です。

4.完成矢の総重量と重心

シャフト、羽根、筈、矢尻を組んだ完成状態で考えます。「このシャフト番号なら必ず同じ飛び方」とは限りません。現在の矢と比較する場合は、総重量や重心も弓具店へ確認してください。

5.羽丈と羽山

遠的競技の羽丈は9〜15cm、羽山は5mm以上です。小さい羽根を選ぶ場合も、甲矢・乙矢の区別、羽根3枚、本矧・末矧など、ほかの要件を合わせて確認します。

6.矢尻と的受け

利用する射場の的・的受けと、使用する矢尻が合っているかを確認します。矢尻の緩み、変形、シャフトとの不適合があれば使用しません。

7.一組のそろい方

大会や記録を意識するなら、矢尺、重量、羽根、筈、矢尻の状態が一組の中で大きくばらつかないことが重要です。購入後も番号や仕様を記録し、修理・交換時に同じ条件へ戻しやすくします。

弓具店へ相談するときに伝えること

遠的矢を相談するときは、次の情報を持参・整理すると話が早くなります。

  • 身長だけでなく、確認済みの矢尺
  • 使用する弓の種類、長さ、弓力
  • 現在の矢のシャフト番号、長さ、総重量
  • 遠的経験の有無と、現在の矢で60mを引いた結果
  • 出場予定の大会名と最新要項
  • 霞的・得点的、的の大きさ
  • 予算と必要な本数、使用開始希望時期

近くの店をどう選ぶか、対面とオンラインをどう使い分けるかは、弓具店の選び方と活用法|知っておきたい弓道の入口も参考にしてください。

購入後・使用前の点検

  • 箆に曲がり、ひび、へこみ、異音がないか
  • 矢尻と筈に緩み・割れがないか
  • 羽根の欠損や剥がれがないか
  • 本矧、末矧、筈巻にほどけがないか
  • 甲矢・乙矢の区別がつくか
  • 一組の長さ・仕様が注文内容と一致するか
  • 大会要項の弓具規定を満たすか

天然羽を使った矢については、全日本弓道連盟が「矢羽の使用に関する準則」と関係資料を公開しています。適正な羽根であるか、トレーサビリティ証明書の作成・携行が必要かを確認してください。

異常を見つけた場合は自己流で直してそのまま射たず、購入店や専門店へ相談します。日常の点検は、弓道の安全対策|事故を防ぐ弓具点検・矢取り・巻藁練習の注意点でも確認できます。

遠的矢に関するよくある質問

遠的を始めるなら専用の矢が必須ですか?

最初から必須とは限りません。現在の矢が規則・大会要項を満たし、弓との適合と60mでの安全が確認できれば、練習に使える場合があります。まず指導者に相談し、遠的場で確認してから購入を判断してください。

アルミ矢とカーボン矢のどちらがよいですか?

材質だけで優劣は決まりません。矢尺、弓力、シャフトのサイズ、完成矢の重量、予算、修理や部品入手まで含めて選びます。現在の矢の仕様を弓具店へ伝え、比較してください。

遠的矢は軽いほど飛びますか?

軽量な矢は遠的用製品で採用されることがありますが、軽ければ軽いほど安全・安定するわけではありません。弓との適合を外れた軽量化は避け、完成矢として専門家に確認してもらいます。

オンラインだけで注文してもよいですか?

矢尺、弓力、シャフト、重量、羽根、矢尻の仕様が指導者・弓具店との相談で確定している場合は、オンライン注文が選択肢になることがあります。初めて遠的矢を選ぶ段階で、商品名と価格だけから決めるのは避けたほうが安全です。

まとめ|遠的矢は「規則・安全・自分との適合」で選ぶ

遠的矢は、近的矢より短い羽根や軽量なシャフトを採用する製品があります。しかし、それは傾向であり、「遠的用」の表示だけで自分に合うとは限りません。

まず競技規則と大会要項を確認し、安全な矢尺、弓力、現在の矢の仕様を整理してください。その情報を指導者と弓具店へ伝え、完成矢の重さ・バランスまで含めて選ぶことが、買い直しと事故を避ける近道です。

参考資料・確認先

※本記事は2026年8月19日時点で確認できる公式資料・販売元情報を基に作成しています。競技規則、大会要項、商品仕様、価格、在庫は変更される場合があります。購入・出場前に最新情報をご確認ください。

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