弓道を始めたばかりの頃は、射形や体配に集中しがちですが、次第に試合に出場する機会がでてくると思います。
最初に確認したいのは、参加する大会の要項です。弓道の試合には共通する基本がありますが、射数、団体の人数、坐射・立射、服装、制限時間、同中時の順位決定方法などは大会によって異なります。
この記事では、公益財団法人全日本弓道連盟の「弓道競技規則」を基準に、初心者が試合前に知っておきたいルールを分かりやすく整理します。
弓道の試合では、まず大会要項を確認する
「弓道のルール」と一言でいっても、すべての大会が同じ形式で行われるわけではありません。
大会要項には、主に次の事項が記載されます。
- 近的か遠的か
- 個人競技か団体競技か
- 的中制・得点制・採点制のどれか
- 予選と決勝の方法
- 1回の射数と総射数
- 坐射か立射か
- 団体の人数と選手変更・交代
- 服装・ゼッケン・弓具の規定
- 制限時間
- 同中の場合の順位決定方法
所属先で普段行っている方法と、大会の運行方法が同じとは限りません。申し込み時だけでなく、試合前にも要項を読み直しておくと安心です。
弓道競技の種類と分け方
弓道競技は、いくつかの観点で分類されます。初心者は、次の3つを分けて考えると全体像をつかみやすくなります。
| 分け方 | 種類 | 主な違い |
|---|---|---|
| 射距離・種目 | 近的/遠的 | 近的は28m、遠的は60mを基本とする |
| 参加単位 | 個人競技/団体競技 | 個人の成績か、チームの成績か |
| 評価方法 | 的中制/得点制/採点制 | 的中数、矢所の得点、行射の採点のどれで競うか |
的中制・得点制・採点制の違い
- 的中制:的への的中数によって順位を決める方法
- 得点制:的の中心を基準に区分された得点を合計する方法
- 採点制:審判が射法・射技、射品・射格、体配、心気、的中などを総合的に採点する方法
一般に「試合は中った本数で競う」と説明されることが多いものの、公式規則には得点制と採点制もあります。弓道競技のすべてが的中数だけで決まるわけではありません。
近的と遠的の距離・的の違い
| 項目 | 近的競技 | 遠的競技 |
|---|---|---|
| 射距離 | 28m | 60m |
| 主な的 | 直径36cmの霞的・星的 | 直径100cm・79cm・50cmの霞的、直径100cmの得点的 |
| 行射 | 持的、原則として坐射 | 1射場につき1つの的、立射 |
初心者向けの説明では「近的は28m・36cm的、遠的は60m・100cm的」と覚えると理解しやすいでしょう。ただし、公式規則では競技内容や大会要項に応じて、ほかの大きさの的も使用できます。
1回に引く矢数は2射または4射
1回の立で必ず4本引くとは限りません。
行射1回の射数は次のいずれかとされています。
- 2射:一手
- 4射:二手、または四つ矢
どちらで行うかは大会要項に明記されます。予選と決勝で射数が変わる場合もあるため、「弓道の試合は常に四つ矢」と思い込まず、1回の射数と大会全体の総射数を確認しましょう。
近的の的中はどう判定される?
近的の的中は、単に矢が的紙の線へ触れたかどうかで決まるものではありません。
公式規則では、矢の根が的面を射抜き、矢が的枠内にとどまっているかを基本に「あたり」「はずれ」を判定します。矢が折れた場合は、矢の根側の状態で判定します。
「あたり」とされる主な例
- 矢が的面を射抜き、的枠内にとどまった
- 矢が的枠の合わせ目、または的枠にとどまった
- すでに的中している矢へ継矢となった
- ほかの矢に接触したあと、的枠内にとどまった
「はずれ」とされる主な例
- 矢が的枠内にとどまらなかった
- 的枠の外側から内側へ射抜いた
- 矢が跳ね返り、的枠の外へ出た
- 幕や防矢ネットなどの障害物に接触した
判定が難しい場合は、的前審判委員が矢の状態を確認します。射手が自分の位置から見た印象だけで判断せず、審判の判定に従います。
同中の場合は射詰競射や遠近競射で順位を決める
的中制の個人競技で的中数が同じ場合、代表的な順位決定方法として射詰競射と遠近競射があります。
| 比較項目 | 射詰競射 | 遠近競射 |
|---|---|---|
| 順位の基準 | 的中を継続した数 | 的中心からの距離 |
| 行射 | 1射ずつ行う | 1つの的へ、同じ位置から交代して1射ずつ行う |
| 主な用途 | 優勝者など上位の決定 | 複数の順位を決める場合など |
| 注意点 | 必要により24cmの星的を使うことがある | 同距離なら再競射または同位となる |
射詰競射
射詰競射では、1射ずつ行い、的中を継続した数が多い射手を上位とします。的中を逸した同位者は遠近競射へ移ることがありますが、最上位者を決める場合は射詰競射を続けることもできます。
「外した人から必ずその場で脱落して終わる」とだけ覚えると、実際の順位決定方法とずれることがあります。どの順位まで射詰で決めるかは、大会の説明を確認してください。
遠近競射
遠近競射では、同じ位置から1つの的へ1射ずつ行い、的中心に近い矢を上位とします。的に中ったかどうかだけではなく、的面の延長面を含む矢所によって順位を判定します。
同じ距離にあると判定された場合は、再び競射を行うか、同位とします。最終的な判定は複数の的前審判委員が行います。
団体戦の人数や形式は大会ごとに異なる
全日本弓道連盟の競技規則では、団体競技は選手3名以上で編成し、実際のチーム人数は大会要項で定めるとされています。
3人立・5人立だけでなく、学生弓道などでは大会やリーグによって異なる人数・射数・運行方法が採用されます。そのため、「弓道の団体戦は必ず3人または5人」とは限りません。
団体戦では、次の点を確認しましょう。
- 登録選手・補欠・監督の人数
- 立順
- 1人あたりの射数
- 予選・決勝・トーナメントの方法
- 同中時の一本競射
- 選手変更・選手交代の手続き
- 制限時間
大学弓道の試合形式については、大学弓道と高校弓道の違いと大学弓道の1年間|練習・大会・試合の流れも参考にしてください。
行射の順序と間合いは大会の運行に従う
行射は、射場ごとの立順と競技の運行に従って進みます。
「1本引いたら必ず全員が引き終わるまで待つ」「同じ射手が続けて2本引くことはない」など、所属先で行っている一つの方法を弓道競技全体の共通ルールとして覚えるのは適切ではありません。
坐射か立射か、何人立か、2射か4射か、制限時間があるかによって間合いは変わります。事前に大会要項を読み、監督会議や当日の説明がある場合は、その内容を優先してください。
弓具・服装・制限時間のルール
弓具
競技で使用する弓具は、伝統的な形状で、危険を及ぼすおそれのないものとされています。弓・矢・弦などには規定があり、競技の種別によって大会要項で追加条件が設けられることもあります。
弓具の破損は安全や失権の扱いにも関わります。試合前に弓、弦、矢、弽などを点検し、異常があれば使用せず、指導者や大会役員へ確認してください。点検の基本は弓道の安全対策|事故を防ぐ弓具点検・矢取り・巻藁練習の注意点で詳しく解説しています。
服装
全日本弓道連盟の一般規則では、競技の服装を「弓道衣・袴・白足袋」または「和服・袴・白足袋」としています。ただし、服装の色はすべての大会で一律に白衣・黒袴と定められているわけではありません。
一部の全国大会では白筒袖・黒袴・白足袋が指定され、大会独自にゼッケンやマークなどの規定が設けられる場合もあります。参加する大会の要項で、色・形・ゼッケン・学校名やチーム名の表示を確認しましょう。
制限時間
団体競技では、行射に制限時間が設定される場合があります。制限時間の有無や具体的な時間は、人数、坐射・立射、射数などによって異なります。
制限時間を超えて射離した矢が無効になったり、残った矢が失権になったりすることもあるため、対象大会では計時開始の合図、予鈴・本鈴、時間超過時の扱いを事前に理解しておくことが大切です。
試合と昇段審査は何が違う?
試合と昇段審査は、どちらも弓を引く場ですが、目的と評価方法が異なります。
| 項目 | 試合 | 昇段審査 |
|---|---|---|
| 目的 | 定められた競技方法で順位を決める | 段級位の資格基準に達しているかを判定する |
| 主な評価 | 的中、得点、採点など大会形式による | 体配、射法・射技、気息、離れ、残身、矢所・的中などを総合評価 |
| 確認資料 | 大会要項・適用される競技規則 | 審査規程・審査統一基準・審査要項 |
的中制の試合では的中数が順位へ大きく影響しますが、所作が崩れても「中りさえすれば何をしてもよい」という意味ではありません。競技規則、安全、行射手順、弓具・服装の規定を守る必要があり、無効・失権・失格の規定もあります。採点制では、的中だけでなく行射そのものが評価されます。
一方、審査では段級位ごとの資格基準に基づき、体配と射法・射技を総合的に判定します。「四段は一手皆中すれば合格」といった一律の公式基準はありません。的中は重要な評価要素ですが、特定の的中数だけで合否が決まるものではありません。
初めての大会で確認したいチェックリスト
大会前日までに、次の項目を確認しておきましょう。
- 大会名・日時・会場・受付時間
- 適用される競技規則と大会独自の特例
- 近的・遠的、個人・団体、競技方法
- 1回の射数と総射数
- 坐射・立射と立の人数
- 立順と行射の間合い
- 予選通過・同中競射・順位決定の方法
- 団体の登録選手、補欠、選手交代
- 服装、足袋、ゼッケン、マークの規定
- 使用できる弓具と替弦・替矢
- 制限時間と合図
- 弓・弦・矢・弽の安全点検
- 昼食、飲み物、控室、貴重品管理
分からない点がある場合は、自己判断で済ませず、顧問、指導者、監督または大会事務局へ確認してください。
弓道の試合ルールに関するよくある質問
弓道の試合は、1回の立で必ず4本引きますか?
いいえ。全日本弓道連盟の競技規則では、1回の射数は2射(一手)または4射(二手・四つ矢)です。どちらで行うかは大会要項に記載されます。
矢が的の白線に触れれば的中ですか?
「白線に触れれば的中」という共通ルールではありません。近的では、矢の根が的面を射抜き、矢が的枠内にとどまっているかなどを基準に審判が判定します。
団体戦は3人または5人で行うのですか?
3人立や5人立は多く見られますが、すべての大会に共通する人数ではありません。具体的な人数は大会要項で定めます。大学弓道の試合では4人立や6人立の形式でも行われます。
射詰競射と遠近競射の違いは何ですか?
射詰競射は的中を継続した数で順位を決め、遠近競射は矢が的中心にどれだけ近いかで順位を決めます。どちらを採用するか、どの順位まで決めるかは大会要項や当日の説明を確認してください。
まとめ|共通ルールを知り、大会要項で最終確認しよう
弓道の試合には、近的28m・遠的60m、個人競技・団体競技、的中制・得点制・採点制などの基本があります。一方で、射数、団体人数、坐射・立射、服装、制限時間、順位決定方法は大会によって異なります。
特に初心者が覚えておきたいのは、次の4点です。
- 最初に大会要項を確認する
- 1回の射数は2射または4射で、常に四つ矢ではない
- 近的の的中は白線ではなく、矢の状態を審判が判定する
- 試合も審査も、的中数だけで単純に説明できない
共通する競技規則を理解したうえで、参加する大会の要項と当日の説明を確認すれば、落ち着いて試合へ臨みやすくなります。ルールだけでなく道場での安全やマナーも確認したい方は、弓道場の使い方|初心者が知っておきたいマナーとルールもあわせてご覧ください。
参考資料
※本記事は2026年8月11日時点で確認できる公式資料を基に作成しています。規則や大会要項は改定される場合があるため、出場時は主催者が公開する最新情報をご確認ください。

